旅行記12 アルベンガ

9月22日
昨晩よりフィナーレ・リグレという北イタリアの地中海岸にある小さな街に泊まっている。夜中に雨音で目が覚め洗濯物をとりこんだけど、今朝の天気はまずまずの模様。ゆっくり身支度し食堂で朝食を頂く。小さなリゾート地であるこの街も9月も終わりとなり秋風が吹きはじめている。ホテルの前のヤシの木が並ぶ海岸通りも閑散として見えた。
フィナーレ・リグレの小さな駅から鉄道で20分ほどのアルベンガの街へ。アルベンガの駅へ着くと新市街が広がり訪れたい旧市街がどこにあるか見当つかず少々不安になる。しかし、しばらく内陸側へ進むうちに塔が見えてきてひと安心。一方には大きな川が流れ、残りの三方を道に囲まれた非常にコンパクトな街がアルベンガだった。この街の骨格をなすような通りや教会、塔、広場はあるものの少し深く路地へ踏み込むと光と陰が交じり合うような複雑な場所を彷徨うことになる。路地には建物の外壁がつくりだす凹凸や角度のふれ具合で道のような、小さな広場のような、部屋のような不思議な場所が生まれ、その上をまたぐ建物やバットレスが光と陰を交互に路地へ投げかけ不思議な奥行きをつくりだしている。そんな都市と路地の関係を鈴木恂さんは「回廊」として眺めている。
「人が回廊の一歩一歩に感じる外部とは異なる感覚は、どうも建築のもつ個性といった人間臭いものの内側から出ているようだ。・・それだからこそ回廊は、都市の外皮と生活の内臓の双方を、その末端まで見透せる場所になりえているのではないか。アルベンガには見事にそのような街並があった。(鈴木恂 「実測小論」 都市住宅 1969年1月号より)
フィナーレ・リグレへ戻るもまだ17時すぎで明るい。しばらく海岸の砂浜、波うち際に座り込みビールを飲む。その後夕食までの時間つぶしにフィナーレ・リグレの街も歩いてみる。駅前と海岸通りだけのリゾート地と思っていたら旧市街らしき、しっかりとした街並があることに気付く。17世紀くらいのバロック的なカテドラルがあって何気なく内部へ入ってみた。夕暮れのほの暗い堂内には賛美歌が流れ、ぼんやりとローソクの明かりが見える。ひやかし半分で入ったのに、なんだかやさしく受け入れてくれたみたいな気がして切ないような不思議な気持ちになった。この旅ももうすぐ終わりなんだなあ。

アルベンガもまた城郭都市。外周の入口より内部を眺める。

街を横断する通り。商店やレストランも並ぶ。

比較的広い通りから狭い路地へ。建物のちょっとした出入りが路地に出入隅をつくる。

トンネル状の路地。上をまたぐ建物が光と陰を交互に路地へ投げかける。

床のレンガ舗装部分は雨水誘導用。



クランクする路地。

バットレスと路地をまたぐ建物が街をひと塊に連続させる。



アルベンガの屋根伏図。実際の体験とは異なりシンプルに見える。

アルベンガのスケッチから。

フィナーレ・リグレのカテドラル内部。

中庭のあるフィナーレ・リグレのホテルの食堂。

シーズンも終わりかけのフィナーレ・リグレの海岸。


備考 http://it.wikipedia.org/wiki/Albenga




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