遠い太鼓

遠い太鼓に誘われて
私は長い旅に出た
古い外套に身を包み
すべてを後に残して    
(トルコの古い唄) ※1


ダイレクトメールの類、請求書など処理すべき書類。それから未整理の資料の類。それらがどんどん机の上にうずたかく積もっていく。何が必要なものか、捨てていいものか。とっておくべきものか。領収書の類、そうだ帳簿もすでに半年くらいつけてなかった・・。「知ーらない」ってごっそりゴミ箱に捨ててみるとスッキリした。
「キャホー!」と絶叫しながら全部捨てて・・服も、パソコンも、本も・・身ひとつでどっかに行きたくなることがある。建築も本当はそうありたい。日本では屋根があればそれでいいんだよ。後は全部余計なものなんだ。

閑話休題
何かつくりだす仕事において、歳を重ねるということは豊かさであると思う。いろいろな考え方、知識も増えていく。何より経験が増す。体がものを考えるようになっていく。それは本当にすばらしいこと。
しかし、ある年齢までにしかつくれないものもあるんだろうか。いったん越えると戻れなくなってしまう分水嶺のような境界線が。たぶん一般的にはあまり意識されなくても、何かつくりだす仕事をしている人間には直感的にわかるんだろう。
村上春樹にとってのそれは40歳だったという。
「それは予感のようなものであった。でも三十も半ばを過ぎるころから、その予感は僕の体の中でどんどん膨らんでいった。※1」そして村上春樹はその分水嶺を超えたときにはつくれなくなってしまうだろう小説(※2)を書く為に3年間ヨーロッパで生活することになる。三十七歳から四十歳になるまでの三年間。
僕の三十代はあと五年。そのうち何ができるだろうか。僕は二十代と三十代の前半を東京で過ごした。田舎での生活は僕の考え方にどんな影響を与えるのだろうか。そんな高尚な仕事はできないだろうけど、とにかく雑務をできるだけたくさんやりたい。今はたくさん無駄なことをやらなきゃいけない。楽したらダメだー。そんな気はする。

※1 村上春樹「遠い太鼓」から
※2 「ノルウェイの森」と「ダンス・ダンス・ダンス








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