島根県立武道館

通りがかりに島根県立武道館(1970年 設計:菊竹清訓、構造:松井源吾)が開館していたので、かなり久しぶりに足を踏み入れました。
4つのコアに2本の大梁が架け渡されています。この梁は梁せいが大きく、ひとや設備が入るくらいのスペースを抱えているように見えました。
ルイス・カーンが言う、建築の「サーブドスペース」と 「サーバントスペース」というものがあるとすれば、この大梁は、それ自体がサーバントスペースと呼び得るような気がしました。
伝統的な組積造のポシェ(空間を図として見たときの地にあたる部分)は主に垂直方向の壁厚で、地として塗りつぶされた部分だけど、この梁は水平方向へ運動するポシェとでも言いたくなります。
無柱の空間を支えるこの梁は、地と図の関係がひっくり返ったとき、この建築の主役になる何かを、その内部に抱えている。という空想です。
人間に使われていない、機能から解放された、ガランとした暗がりの武道館にひとり立っていると、建築そのものが持つ物質の側の世界が現れてきたのかもしれません。
小学生の頃、県の剣道大会か何かだったか。初めてこの武道館の天井を見上げた時の、恐ろしさに似た、「むこう側の世界」を頭上にみたことを思い出しました。

 

 

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