メモ 100623

現代社会は完成されたシステムの上に成り立っています。現代社会では個人が自由に生きていけます。
近代以前の社会では共同体に属さなければ生きてゆくことはできませんでした。そこでは各身体に役割が与えられ、その役割を果たすことが人生でした。建築に様式が与えられてはじめて社会的な意味を持ったのと同じように。
近代化の過程では、近代国家の前提となる市民をつくりだす必要がありました。近代建築が均質な世界観を持つこともそのことと関係していたと思います。建築には異質な共同体の構成員であるムラビトを一定のフォーマットに対応した均質な市民につくりかえる装置としての役割が要請されました。共同体が無くなったとき、「家族」が発見され、「住宅」という単位が発明されます。
「集合住宅の原理というのは、ひとつの家族をひとつの住戸ユニットのなかに閉じ込める。つまり、隔離する。そして隔離されたそのひとつひとつの単位を快適にしていこうということだった。」(山本理顕
「住宅」は市民を再生産する装置として機能しました。
そして均質化と同時にそれらをまとめるための表象、近代国家としての「日本とは何か」という求心性も必要になります。
「急激な産業化と都市化で伝統的共同体を空洞化させ、アノミーに陥った成員たちを伝統的共同体ならぬ国家共同体へと糾合し、それによってもっと急激な産業化と都市化を推進する、という循環を回す。この人為的な糾合に必要なのが、アイコンです。」(宮台真司)
建築には、市民をつくりだす装置であると同時に近代国家を表象するアイコンとしての役割も求められました。アイコンとしての建築をデザインすることに最も成功した建築家は丹下健三でした。



映画イノセンスより
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