「住宅」とは何か 01

「家族」の誕生

僕は建築の設計を仕事としています。建築の設計といっても、その中心となるのは住宅の設計になるんだろうと思います。そこで考えたことがありました。「住宅」とはナンだろう?と。そして「住宅」とは「家族」が住むための場所だと思いました。そうすると今度は「家族」とはナンだろう?と思いました。

もともと「家族」とは日本が近代国家として誕生したときに、明治民法の戸籍法(1871年)において発明した制度だったと思います。それまで封建的な閉じた共同体の複合にすぎなかった日本が、ひとつの近代国家として成立しようとしたとき、「家族」をその基礎単位としてつくりだす必要がありました。まず、「家族」を自明な、普遍的な存在として眺めるまなざしそのものが、そうした制度の内側からのものであることに自覚的でありたいと思います。

「住宅こそは建築の最も基本的なプログラムであるというクリシェは全く近代的な意識の上で成立している。私的な領域としての家庭生活とは、自明どころか、近代に公的活動や生産活動から分離していくことではじめて成立したものである。その社会的単位と見られる家族の方も、夫婦を元にした核家族的なものと了解するなら―やや留保は必要だが―同様に明治の国民国家の戦略的な要請によってつくりだされた単位であったことは近年の家族研究では常識化している。(八束はじめ著「思想としての日本近代建築」より)」

しかしながら、戦後の資本制社会の発達までは共同体のなかで家業を営む近世までと変らない生活形態がまだ多く存続していたと考えられます。夫婦が同居しない家族形態や、血縁家族以外の成員が一緒に寝泊りすることも当たり前のことだったと思います。生産行為が「家族」を超えた共同体の中で営まれていれば、現在考えるような「家族」と他人の明確な境界は無く、逆に子供もまた貴重な労働力だったはずです。
山本理顕さんが著書のなかでパリのアパルトマンもオスマンのパリ改造前くらいまでは、一住戸に一家族というユニットの集まりではなく、一階のお店で働く複数の家族や単身者が入り混じってその建物のなかで生活していたと言われていました。

「家族」とは、資本制社会が発達することで共同体が喪失し、家内領域と公共領域が分離することで発見された社会的単位と見ることもできます。ここで制度として発明された「家族」と実際に社会から切り離されることで発見された「家族」が重なってくると思います。

郊外の新興住宅地。(神奈川県)

追記:面白いサイトがあったので貼っておきます 091023 http://www.tostem.co.jp/biz/iest/ienochi/05/01.htm


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