鳥上(とりかみ)の空

奥出雲町内にある小学校の改修工事を設計監理することになりました。現地調査を終えて帰ろうとしたときに山並から沸き立つ雲が見えました。その小学校の建つ鳥上(とりかみ)地区は大きな山に囲まれた盆地です。
鳥上は高天原を追放されたスサノオが降り立った場所です。鳥上ときくと鳥に姿を変えた神様がゆうゆうと空をとんでいるような風景を想像してしまいます。
南には船通(せんつう)山が夕闇のなかにそびえ、北の玉峰(たまみね)山に雲がぶつかり雨を降らそうとしているようでした。夏の夕暮れは光や雲の流れが大きく変化します。同じ時刻でも、そこには逆光と順光のつくりだす全く別の世界が共存しています。「となりのトトロ」でお姉ちゃんが迷子になった妹を探す場面を思い出しました。それはのどかな昼間の風景が一変し、夏の夕暮れの刻一刻と表情を変えていく山の光が姉の気持ちのなかに訪れる不安や期待と重なっているみたいでした。

遅い梅雨明けで、やっと奥出雲の地にも夏がやってきました。