森山大道

先日たまたまテレビで森山大道さんの番組がやっていた。森山大道さんの写真はなんとなく印象に残っている。森山大道さんは幼少期を島根の石見地方にある小さな漁村で過ごしたらしい。
鉄道の車窓から見える日本海の海岸。低く覆う薄曇りの空。荒波。カモメが舞う、荒波の上を。演歌・・。夜の汽車。窓のむこうの暗闇をただ眺める。長い長いトンネル。出口が小さな光の点に見える。ずっと見つめているとその光は大きくなったり小さくなったりぼけたりする。
森山大道さんは田舎の断片を、記憶の断片をふと見ることがあるという。池袋の仕事場で。真夜中に。タバコの煙の間から。新宿の路地裏からふっと。
うち捨てられた風景。
新宿の路地裏のてらてらと光る安っぽいタイルにあぜ道の水たまりの光と影が現れる。深夜2時。ゆらゆらと漂う煙草の煙に懐かしいにおいと記憶が蘇る。あれは土蔵のにおいだったか。小学校のストーブだったか。
森山大道さんはそんな記憶の光を拾い集めているのかなと思った。

新宿から大久保のアパートへ帰るときいつも歩いたゴールデン街脇の緑道