以前書いた日記から
「松江での大学時代、3年生くらいだったか。それは春でした。缶コーヒーを買う為に夜中に下宿の外に出ると、春の空気のなかに、キンモクセイのにおいに包まれた夜の暗闇に、あてもないまだ見ぬ未来の膨大な時間の予感を感じたことを覚えています。それはとても幸せな感覚でした。当時の僕が最も恐れていたのは将来が決まってしまうことでした。先の見えない将来に向かって進む余地のあること。それが若さの特権かもしれません。今の時代はきっと逆なんだろうとも思います。将来が見えないことは、若さに与えられた幸せな感覚ではなくて不安にすぎないのかもしれません。」
40を目前にやっと自分のやっていきたいことが見えてきました。いや見えてるのだろうか。 とにかく建築の設計で生計を立てていくこと、ただそれだけです。
40は何か人生の分水嶺のようなものだと村上春樹は言いました。
「四十歳というのはひとつの大きな転換点であって、それは何かを取り、何かをあとに置いていくことなのだ、と。そして、その精神的な組み換えが終わってしまったあとでは、好むと好まざるとにかかわらず、もうあともどりはできないのだ。」
遠い太鼓に誘われて
私は長い旅に出た
古い外套に身を包み
すべてを後に残して
・・僕ももう引き返せない「分水嶺の向こう側」へいく前に、ひとつ仕事をしておきたい。
- 作者: 村上春樹
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