まつえ / 風景会議

近代はいろいろなものを機能で分けていった時代だと思います。住宅の内部では食べる場所と寝る場所が分けられ、都市は用途(機能)によって分けられました。住む為だけの住宅を建てる場所、商売する場所、工業の為の場所などに分けられました。でも今から見ればそれは計画する側、管理する側の都合だったんじゃないかと思いますよね。
結果的に人口が減ってくると旧市街地の疲弊が目立ち始めます。旧市街地は、本来は商売する場所であり、同時に市民の日常生活の場所でもありました。通勤を前提としたサラリーマン社会になって、住む場所(郊外)には人が増えても、商売する場所(旧市街地)から人の姿が消えていきます。
そんななか、松江のまちなかには良い変化がみられていると思います。まちなかに日常の一部としての居場所が増えているからです。ひとの営みがまちの通りににじみ出ると生き生きとした雰囲気になりますね。
高層マンションは住人のプライバシーを守るユニットの集積です。まちとの関係を持たないからこそ、単一のユニットをコピーアンドペーストで積み上げていくことが可能です。
個人的には松江市の中心部に多くの人が住むマンションが建つことは良い事だと思います。しかし、高層マンションはまちとの関りを持ちません。全国どこにあっても変わらない建ち方をします。
まちなかの表情を豊かにするのは人の営みが見えることだと思います。たとえそれがささやかなものであったとしても。
規模にかかわらず、既にある建築計画について反対することは個人的には苦手ですが(建築に関わるものとして、それがどれだけ大変なことか容易に想像がつくからです)。殿町タワーマンション計画を発端として、市民がこの街のこれからのあり方を語り合う機会になれば、それはとても良い事だと思いました。