「中国的建築処世術」

中国を拠点に設計活動、研究活動をするお二人(東福大輔+市川紘司)の共著。
中国建築を動かすプレイヤーたち、中国建築が生まれるプロセス、中国式ビルディングタイプ考、日本人が気をつけるべき中国建築事情など。生々しい現場の実務の事情と、その中国特有の文化的背景の考察は読み物としても楽しく、中国建築なんて全く関係のない世界だと思っている僕にとっても一気に読み通せる内容でした。
興味を持ったのは中国では私有財産が制限されていて土地を私有することができないというはなし。これはディベロッパーと政治権力の問題をつくりだしますが、一般庶民が日本のように私有地で閉じない可能性も生むとしたら面白いなあと思いました。(他人に遠慮しない、したたかな国民性にもよるんでしょうけど)「基本的に大型の開発しかありえないので、経済性や制度が前面に出てしまう。でも、いったん建物がつくられたあとには個人がタフに場所を使っていくことがおこなわれていて、そのボトムアップのフェーズでは建築家がやれることも非常に多いように思います。」(山代さんのインタビューから)
巨大な建築群と、その隙間を自由に使いこなす人間的なスケールの活動があるとしたら、虚構にしか見えなかった中国の都市が、なんだかちょっとだけリアルな風景として感じれるような気がしました。
中国の現場では設計の意図を貫くことが難しいというエピソードも、次元は全く違うけど図面を読めない大工さんとのやりとりを思い出して、ちょっと勇気づけられました。
「逆に感じるようになったのは日本の特殊性である」という指摘も面白いです。「日本的なやり方にこだわらないスタンスが求められる。」
それにしても中国の圧倒的なスケールとスピード感についていくのは大変だろうなあ。ここで仕事をしてたら、少々のことは気にならなくなるんでしょうねw

中国的建築処世術

中国的建築処世術