「箱の家に住みたい」

今日は思い立って手に取った難波さんの「箱の家に住みたい」を読みました。

箱の家-1のクライアントとの臨場感あるやりとりや、箱の家の内装の仕様とその理由など、とても整理されていて、実務者にとっても具体的で参考になる内容もありました(14年前の著書なので現在の考え方とズレはあると思いますが。)。
そしてあまりに自明と思い込んでいる「住宅」や「家族」というものの存在を相対化する視点と、そこから位置づけられる箱の家の意義は説得力のあるものでした。

「しかし前にも述べたように、これはかつて考えられていたような運命共同体としての家族の一体性を想定した空間ではない。そうではなく、家族のメンバーが同意する一定のルールのもとに「家族ゲーム」を演じるための、一種の舞台装置なのである。」

nLDKという商品にすぎない機能分化した住宅の捉え方に、僕を含め設計者自身が未だに囚われていることにも改めて認識しなきゃと思いました。
箱の家の設計プロセスのイメージは、まずその場所の環境から箱型の空間が分化され、その箱型の空間の内部に大まかな機能ゾーンが発生していき、その内部の分化はなるべく最小限のところで止められます。
これは、ある意味でそこで暮らす家族、ひとりひとりに対する信頼のあらわれでもあると思います。設計者があまりにきめ細かくつくりこむよりも、そこで暮らす家族が、その関係を考えたり、無意識にお互いを感じ、自分の居場所を発見していくことが重要視されています。むしろそのことが「住宅」という実は特殊な場所で一緒に暮らすことの意味なのかもしれません。


箱の家に住みたい

箱の家に住みたい