建築が好きになったきっかけのひとつは1998年に早稲田大学で石山修武さんが催されたA3ワークショップでした。2週間、24時間とにかく建築漬けの日々でした。参加者は建築家の卵から学生、ゼネコンの設計部から銀行マン、左官職人から主婦まで多種多様。午前中は第一線の建築家や哲学者、芸術家などのレクチャー、午後はひたすら手を動かす毎日でした。それまで建築の世界から離れた場所に居ると思っていた自分にとって、それまで鬱積していたものが全部消えていくような素晴らしい時間でした。
石膏で照明器具を考えなさいという課題。学生時代はどうしても頭でばかり考えがちです。それは狭い世界なんですね。
原寸で考えること、手で考えること、リアルな素材を手で触れて考えること。
原寸で、実際の素材に触り、手を動かしてるくること。そこから始まる世界の方が実は建築に近かったりします。
一枚の板が折れたり、曲がったり、孔があいたり。
自分らしく、自分のものとして建築をデザインできている実感がありました。こんなことは初めての体験でした。
これも石山さんからの住宅の課題。細長い敷地でひたすら壁の建築を考えました。
このとき初めて幾何学を下敷きに考えました。5m*5m*5mの立体を長手に7つ並べました。このようなルールに身をゆだねたとき、はじめて自由になった気がしました。石膏のモデルで学んだことを活かして、壁が折れたり、曲がったりして光や人の出入り口が生まれていきました。幾何学の下敷きというルールがあることで、自分の感覚が世界とつながって自由に建築が生まれていくような気がしました。
「お前はできる」石山修武さんがこの汚い模型を見て、そう仰いました。
学生時代はよい意味での勘違いも大切なものではないかと思います。
これ以来、すっかり自信を深め、また建築の面白さに目覚めた僕は、下手くそでもなるべく手を動かしてたくさん模型をつくるようになりました。
伝説的な石山修武さんのA3(職人・芸術・建築)ワークショップ。いまレクチャーの講師陣のラインナップを見ただけでも信じられないような顔ぶれです。石山修武、鈴木博之、磯崎新、藤森照信、山口勝弘、梅沢良三、佐藤健、中川武、尾島俊雄、池原義郎、平野甲賀(グラフィックデザイナー)、二川幸夫、津野海太郎(評論家)、坂田昭(音楽家)、森田兼次(日左連会長)等々
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