お彼岸。
太陽が真東から昇り真西へと沈む、秋分の日は、この世(此岸)とあの世(彼岸)が地続きになる日。
建築の本質は境界をどうつくるか、ということだと考えてみます。
その境界をきっかけにして内部と外部が生まれます。
境界は何か特別な場所ではなくて、言い換えればその内部と外部が、図と地が、プラスとマイナスがひっくり返る「ゼロ」のような場所。
無限定に連続する場を切断すること。
お彼岸は、ちょうどその境界の上に立ったときの、内部でも外部でもなく、図でも地でもなく、プラスでもマイナスでもない、それらが地続きになる日なのかもしれません。
現実と夢も地続きになる日。海の夢を見ました。
それは晩夏の地中海の夢でした。
強い太陽の光とすべてを飲み込もうとする海。
古代ギリシアの透明で普遍の光を映す海の波間、その海面は、不定形で不透明な世界との境界面でもあります。
そしてその海面の下は、地中海の文明を生んだクレタの怪物ミノタウロスの住む迷宮の深部へとつながっていきます。
青年の魂が触れたものはなんだったでしょうか。
青年は両親から授かった名を捨て カラス(Corbeau) と名のります。
カラス(Corbeau)と太陽(Soleil)と海(La mer)/ロンシャンの礼拝堂
カラスはギリシャ神話のイカロスにも見えます。イカロスは、あまりに高く飛んだため、太陽の熱で翼が溶け、海で命を落とします。